ある校長
 ある校長の後ろ姿
                       
 後ろ姿の教育と言えば、教育を志す以上その意味を知らぬ者はないと思います。では具体的にどのような後ろ姿が在るのでしょうか。崩壊した中学校に赴任を命じられた学校長の苦悩と学校の再生に必死に取り組まれるその後ろ姿に教頭として接し、胸を打たれた思い出をほんの少しだけ綴って見たいと思います。
 対教師暴力事件でマスコミに大きく取り上げられた学校の状態は経験した者にしか正確には理解できないと思います。それほど重く深刻なものなのです。生徒が廊下に唾を吐く、落書きが目立ち、校内のあちこちに菓子の包み紙が落ちている。トイレの中には煙草の吸殻が毎日のように見受けられ。教室や廊下の天井はいたる所穴があき、トイレの扉は蹴破られ、無残な姿を曝していました。まともな授業は勿論成立しない、そんな状態でした。このような状況の中で私達は一丸となって学校正常化に邁進したのです。
 学校長の経営方針は「美しい学校を創ろう、そして学力を向上させよう」というものでした。率先垂範黙々と環境の整備に取り組まれました。中でも強く印象に残っていることは、生徒総数約一千名の机の天板張替えでした。数にしておよそ三分の一程にグロテスクな落書きが刻み込まれていたのです。「このような机に着席して、生徒たちはどんな気持だろうか、勉強が身に附く筈が無い」と言われたことが忘れられません。作業服に着替え、汗を流しながらこつこつと取り替え作業をなされる後ろ姿に職員、生徒、保護者が深い感銘を受け、学校再建が着実に進展したのでした。お手伝いをしようとすると「教頭は先生方の相談相手となり心から励まして欲しい。二人で同じような事をしてはいけない」と止められました。
今からもう二十年ほど前の、心に残る思い出です。
by bukkin | 2004-10-04 23:38 | 思考・愚考 | Comments(0)
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