黒沢映画『羅生門』の原作となった芥川龍之介の短編「藪の中」に登場する盗賊・多襄丸を主人公にした異色時代劇という宣伝文句につられて映画を見に行きました。
芥川龍之介の原作は、藪の中で起こった殺人事件を7人の証言者が証言、告白するという形式でなりたっています。
捕らえられた盗人、懺悔する男の妻、巫女の口を借りて現れた男の霊のそれぞれの当事者3人の証言は、藪の中で盗人が男を木に縛り付けて男の目の前で女を手込めにしたことは一致しており説得力がありますが、男の死因については、それぞれ、「盗人による他殺」「妻による他殺」「男の自殺」と見事に食い違っておりまして、結局どれが真相なのか、誰が犯人だったのかは全て有耶無耶のままになっているのであります。
結局藪の中のことは分からないのでございます。
どのように映画化されているのか興味がありましたが、時代も設定も原作とはまったく異なるオリジナルストーリーで物語が展開し、期待はずれの感は否めません。
龍之介の作品と結びつけるのには無理がありますが、出演者も多彩ですし、娯楽時代劇としてみれば結構面白く腹も立ちません。145分間居眠りもしませんでした。